謀将 直江兼続〈下〉 (徳間文庫)



謀将 直江兼続〈下〉 (徳間文庫)
謀将 直江兼続〈下〉 (徳間文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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終盤の創作が現実なら...

天下人家康に「直江状」を叩きつけた事で有名な直江兼続の半生を描いた作品。下巻は上巻の四年後、三成の(架空の)遺児七法師の還俗(改名して、坂田佐七郎)から始まる。徳川の宿老本多の次男でありながら、兼続に心酔し、兼続の義子となる政重。この数奇な運命を持つ二人と兼続の打倒徳川を目指した闘いが見所である。

まず、米沢藩において兼続が農業と殖産興業に力を入れる様子が描かれる。今でも山形地方の名産である漆や紅花栽培もこの頃始まったと思えば、兼続の先見性が窺える。また、農民こそ藩の礎として、農業政策を大事にした点も当時の武士としては群を抜く判断力である。農民のために<四季農戒書>を作った程である。これも打倒徳川を実現するためには、金と兵糧が必要だからである。反徳川の仲間も必要である。このため、政重を前田藩に仕えさせる。一方、家康は秀吉恩顧の大名を次々と暗殺し、磐石の地歩固めを図る。この辺、立場こそ逆だが、兼続と家康の思考回路は似ていると思う。公武の確執を狙った公家への接触、前田家の内情も描かれる。兼続を中心に戦国の香りが残る"時代の空気"を映し出そうとした作者の意図が感じられる。兼続は"関ヶ原の戦"はまだ終っていないと見ているのである。それも家康の寿命次第だ。しかし、有名な鐘銘事件等から家康は豊臣家殲滅の意向を露わにする。豊臣家は兼続へ助力を請うが、兼続は断る。兼続の戦略は家康の死を前提にしているためだが、"冬の陣"以前に動く必要があったのではないか。兼続は戦国時代が続くと確信していた節があるが、それも家康の長命で水泡に帰してしまった。

終盤、伊達政宗と組んで挙兵する件は作者の創作だが、読者の望む姿であろう。智略・人望を兼ね備えた戦国最後の武将、直江兼続を鮮やかに描いた作品。



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